○e-NOVELSが会社化

 日刊工業新聞の2000年5月19日の一面に「電子書籍配信・作家の主導で」と いうことで、e-NOVELSという電子書籍の専門会社が設立されるという記事が掲 載されました。その記事によると、資本金は1000万円で井上夢人氏や我孫子武 丸氏などの個人作家が70パーセント、アスキーが10パーセント、その他を出版 社が負担という出資比率の予定。e-NOVELSは1999年夏に任意団体を設立してイ ンターネット上で電子書籍の試験販売を行ってきていて、現在は12人の作家が 参加していて、アクセス数は週に25万ページビューを記録。発表・未発表・絶 版を問わず1000作品を目標にPDF化し、100円から500円でダウロード販売をす る、とのこと。

 ちなみに、e-NOVELS(イーノベルズ)のウェブサイトである http://www.e-novels.net/ は1999年11月1日に開設され、開設初日には10万を 超えるアクセスを記録しました。その直後の14日に朝日新聞で紹介されたのを ご覧になった方もいるのではないでしょうか。12月20日からWeb Moneyでの販 売を開始、2000年の4月にはSo-netの有料コンテンツサービスの1つとしてSo-n etのIDを持っていれば、通常の接続料/情報料と一緒に引き落とされるように なりました。So-netの情報会員にはクレジットカードさえあれば入会料や基本 料などはかからない為、事実上のクレジットカードでの決済となっていると思 います。

 出版社が主体となった電子書籍コンソーシアムは事業化の目処がたたないま ま、解散してしまいました。これは著作権保護を過度に意識するあまり、シス テムがそもそも普及する可能性がかなり低いものだったので、やむを得ないも のだと思います。今度は作家個人が主体となってのプロジェクト。その反省を 生かしていってほしいと思います。

 この記事を書いていて思った最大の事は、法人化に関する情報がオンライン で見つからないぞ〜ということでした^^;。

○Adobe PDF Merchant

 2000年5月17日にアドビシステムズは電子出版向けのPDFの暗号化ソフトAdob e PDF Merchant(アドビ ピーディーエフ マーチャント)日本語版を発表しまし た。これはPDF形式で作られた電子書籍を暗号化し、それを復元する為のライ センスキーを発行する事が出来る電子書籍出版の為の暗号化ソフトです。閲覧 にはAcrobat Readerと専用のプラグインWeb Buy(ウェブ バイ)が必要となりま す。ちなみに、このPDF Merchantは出版社や書店などへの契約販売のみとなっ ています。もちろん、この秋から配布開始予定のWeb Buyは無償提供の予定で す。

 ライセンスキーはパソコンのCPU IDやHDD、ユーザーIDなどが埋め込まれて いて、同一のパソコン以外では閲覧出来ない仕組になっています。また、暗号 技術はRSA社のRC4 128ビットとなっています。

 PDFはVersion 4.0からフォントの埋め込みが出来るようになりました。これ は、異なるマシンでも作者のイメージに近い画面で読者に読んでもらえるとい う事です。これは自分の表現にこだわりを持つ作家にとってはうれしいもので す。また今回の暗号化技術により電子出版に一層の弾みがつくのではないかと 期待します。
 ただ、個人的には今回のこの技術では購入した電子書籍を固有の1つのマシ ンでしか読むことが出来ないと思われます。これでは、著作権保護にばかり重 点が置かれて世みたい時に読みたい場所で自由に読みたいという電子書籍への ボクの期待の重要な要素が損なわれてしまうのではとちょこっと危惧も抱いて います。


電子書籍という潮流 [電子書籍の新風]
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